
前著の『希望難民ご一行様』より、新著は劣っていると思いました。前著は、ピースボートのスタッフ側の視点が欠けているとは思いましたが、一つの社会をよく描いていると思いました。たとえばピースボートに乗る人には30前後の看護師が多いという調査結果がありましたね。看護師というのは、お金がある程度作れて、腕一本で渡っていけて、真面目な人が多くて、次の職場に行く前に乗船の時間が空けられるという人です。そういう女性たちが、ここで人生の転機をちょっとはかりたいということでピースボートに乗るのでしょう。この人たちの労働状況とメンタリティをよく表しています。 それに比べると、今回の本は調査がとても粗い。2、3人街頭で捕まえて聞いただけみたいなものが多いですし、あなたが自分の持っている憶測や仮説を当てはめて全体を作ったように感じます。調査というのはちゃんとやれば自分の仮説が打ち崩されるものなんですけれども、安全な範囲で聞いているなという印象を持ってしまいました。 ただ、たぶんこれが今の日本社会の気分なのだろうな、というものを捉えているとは思います。その点は、あなたの優れた勘を示しているし、その意味で歴史的な本になるかもしれないと思いました。